契約締結による医師主導研究(ISS)への資金等提供に関する指針

2014年4月
欧州製薬団体連合会

  1. 目的
    本指針は、製薬企業から医師主導研究(Investigator Sponsored Study、以下「ISS」という。)に対して提供する資金等が、医療用医薬品の取引を不当に誘引する手段とならず、適切に学術研究に使用されていることを担保するため、またその透明性を確保するために、寄附以外の協力形態の一つとして、これまで明確にされていなかったISS契約締結による資金等の提供を認め、これを行う際の指針として作成されたものである。
  2. 定義
    ISSとは、製薬企業主導ではなく、医師主導による研究である。この「医師主導による研究」とは、臨床、非臨床を問わず、研究を行う医師(医療機関やNPO法人等の場合も含み、以下「研究者」という。)が、その研究の企画・立案、実施、管理、安全性、必要に応じて研究資金の調達を含むすべてに対して、法的責任および倫理的責任を負う研究をいう。ISSは、厚生労働省が定める「医学研究に関する指針」が適用される。
    なお、医師主導治験はこのISSには含まないこととする。
  3. 本指針の適用範囲
    (1)適用範囲内
    製薬企業が行う寄附による一方的な支援とは異なり、契約締結により資金等の提供を行うISSを本指針の適用範囲とする。特に、自社医薬品を使用して実施される臨床分野のISSについては契約締結により資金等の提供を行うこととし、本指針が適用される。
    (2)適用範囲外
    以下の例示を含むISSの定義に該当しない研究は、本指針の適用範囲外とする。
    • A)製薬企業が研究の法的責任および倫理的責任を負う委託研究
    • B)研究者と製薬企業が共同で研究の法的責任および倫理的責任を負う共同研究
    • C)医師主導治験
    なお、ISSの定義に該当する研究であっても、契約締結による資金等の提供を行わない研究については、本指針の適用範囲外とする。
  4. 要件
    (1)製薬企業は、ISSへの資金等の提供を行うにあたって、日本国内の法令および業界基準を遵守するとともに、契約締結による資金等の提供を行う場合は、以下の要件を遵守すべきである。
    • A)資金等の提供を行うISSを特定し、提供内容を明記した契約書を研究者と締結すること。
    • B)現在または将来予測される自社製品の購入または処方を資金等提供の条件としないこと。
    • C)ISSの企画・立案を誘導しないこと。研究者からのISSへの資金等の提供可否についての問合せに対応すること、または資金等の提供可能な研究分野や研究タイプを開示することはできる。
    • D)ISSのプロトコール作成に主体的に関与しないこと。研究者からの求めに応じて、プロトコールをレビューすること、または科学的なコメントを研究者に提供することはできる。
    • E)ISSの企画・立案、実施、管理そのものに主体的に関与しないこと。なお、自社の化合物や製品の安全性に関する情報を研究者に提供すること、または研究者からの問い合わせに回答することはできる。
    • F)ISSの研究者の独立性の侵害を疑われるような科学的、技術的および管理上のサポートを行わないこと。
    • G)A)に記載の契約書により定められた研究以外の目的のために転用できるような資金等の提供を避けること。提供した資金等が対象のISSで使用されなかった場合、その残りは研究者から製薬企業に返還されるべきである。
    • H)製薬企業内の事前審査体制を整え、科学的に実施する価値があると判断されるISSのみに資金等を提供すること。また、ISSの予算が適正で合理的な金額であることを確認し、提供の内容は当該研究予算に見合ったものとすること。なお、研究者への報酬と疑われるような資金等、および会合での飲食代等の個人費用に該当するような費用の提供を行わないこと。
    • I)原則として、ISSへの資金等の提供は、研究の最初に一括して行なわず、研究の進捗状況に合わせて行うこと。
    • J)製薬企業はISSの成果物が公表される前に、そのドラフトに関してレビュー、コメントの機会を研究者から与えられるべきである。
    • K)ISSのプロトコールおよび発表に際しては、当該ISSが製薬企業から資金等の提供を受けている事実が適切に開示されるべきである。また、製薬企業は、当該ISSの成果物を使用する場合は、資金等の提供の事実を開示すること。
    • L)ISSの成果物の権利は、原則として研究者に帰属する。但し、製薬企業が当該成果物の使用権を有すること、また、製薬企業の化合物または製品が使用されている場合に当該成果物の権利が製薬企業に帰属することを、A)の契約書によって定めることは認められる。

以上