皆さまが疑問に
思うこと


Q1. EFPIAの薬価制度改革に向けた基本原則はどのようなものですか?

  • EFPIAは今回の重要な政策議論に貢献できることを前向きにとらえており、すべてのステークホルダーが同意すると思われる以下の4原則に基づいて議論を進めたいと考えています。
    1. 国民皆保険制度(UHC)の維持を保証すること
    2. イノベーションに対する患者アクセスを保証すること
    3. 日本の医薬品市場の予見可能性と安定性を回復すること
    4. イノベーションにインセンティブを与え、日本の医療の質を向上させること

Q2. EFPIAの医療制度に改革に向けた現状に対する基本認識はどのようなものですか?

  • 薬剤費はすでに十分管理されており、2016年度の市場成長率は-3.8%、2017年Q1は-7.2%。世界の医薬品市場が2016年に+6.9%成長したのと非常に対照的です。
  • 医薬品市場の長期的なマイナス成長に加え、安定性と予見可能性が失われることにより、日本市場の魅力が低下し、 多国籍企業が投資を控えることにより新たなドラッグ・ラグにつながる恐れがあります。
  • 薬剤費は一部の例外的な事例を除き十分管理されています。ただし、これらの例外を管理する正式なメカニズムを確立しておくことも必要であると考えます。
  • また、薬剤費は医療費全体の一部に過ぎません。全体的な視野が必要であり、抜本改革を薬価の管理のみに限定すべきではないと考えます。 改革には、診療報酬、治療ガイドライン、入院日数、患者さんの自己負担等を含め、すべての医療費および財源の見直しを含めるべきであると考えます。

Q3. 効能追加等に伴う予想を超えた売上げ増など薬価収載後の状況の変化への対応についてEFPIAはどのように考えますか?

  • EFPIAは効能追加に伴う薬剤費の予想をはるかに超えた増加への適切な対応の必要性について理解します。
  • ただし、予見可能で安定的な制度はすべての関係者にとって最大の利益となることから、例外的に売上が増大し、大きな財政的なインパクトがある場合のみの対応として支持します。
  • また、このような薬価改定は予想ではなく実際の売上高に基づいて行うべきと考えます。

Q4. 類似薬のない新薬に対する原価計算方式についてEFPIAはどのように考えますか?

  • EFPIAは原価計算方式が製品の価値を適切に評価していないことを認識しており、現行の類似薬効比較方式の対象とならない革新的な医薬品の代替的な薬価算定方式について関係者と議論を深めて行きたいと考えています。
  • 代替的な算定方式としては、次のような方法があると考えます。
    1. 新薬の製造原価ではなく、代替的な治療にかかるコストを用いた新たな原価加算(コストプラス)方式
    2. 現行より幅広い基準での類似薬の選択
    3. 外国価格との直接比較

Q5. 日本では新たに発売する医薬品の薬価を算定するにあたり、外国価格(米国、英国、フランス、ドイツの4カ国)との乖離が大きい場合は価格調整が行われますが、米国を今後も参照価格に入れることに議論があります。EFPIAはどのように考えますか?

  • 研究開発はグローバル化しています。
  • 米国は世界の医薬品市場の約半分*を占めており(日本は約8%*)、国際的な研究開発プログラムにおいては米国に対する投資の割合も最大となります。日本が今後も国際的なR&Dに貢献することを望むならば、何らかの形で米国を参照国とし続けることが必要であると考えます。
  • EFPIAは参照する価格を現行のAWP(平均卸価格)から、関係者がより適切と考えられる価格帯に変更することについては支持します。
  • (* 2015年売上高、EFPIA資料)


Q6. これまで2年に1回の頻度で薬価改定が行われてきましたが、その「中間」年を改定することにについて議論されています。EFPIAはどのように考えますか?

  • 基本的には2年ごとの薬価改定を原則とすべきと考えます。
  • 「中間年」における薬価改定の対象は市場価格と薬価との乖離率が大きい医薬品のみとするべきだと考えます。
  • 特許期間中の医薬品については、この「中間」年の改定の対象とすべきではないと考えます。
  • EFPIAは「中間」年の薬価改定などから生じる節減額を、すべての医薬品が特許期間中、当初の価格を保つために使用すべきだと考えます。これは、次の創薬に向けてさらなる投資を継続し、日本の患者さんに革新的な治療をできるだけ速やかに提供するために必要だからです。

Q7. 長期収載品・後発医薬品の今後の薬価の在り方について、EFPIAはどのように考えますか?

  • EFPIAは長期収載品・後発医薬品などの薬剤の効率化から生じる節減を、すべての医薬品が特許期間中、当初の価格を保つために使用すべきだと考えます。節減額がこの目的に充当されるならば、長期収載品・後発医薬品の薬価を再検討するという提案について支持します。

Q8.「新薬創出等加算」のゼロベースでの抜本的な見直しが検討されていますが、EFPIAはどのように考えますか?

  • EFPIAは、すべての新薬が特許期間、当初の価格を維持できるようにするべきだと考えています。これは次の革新的な医薬品の創出に向けて再投資を行い、日本の患者さんに新しい治療をできるだけ速やかに提供するというイノベーションのサイクルを回すために必要だからです。 
  • このためには、現在議論されている「中間」年の薬価改定を始めとした薬剤費の効率化から生じる節減額は革新的な新薬の評価に充当すべきと考えます。
  • すべての新薬に対する薬価維持という制度を導入したとしても、今後は発売後に蓄積されるリアルワールドエビデンス(RWE)に基づく費用対効果評価を実施することにより、医薬品の患者さんに対するベネフィットを検証し、薬価を調整することを通じてバランスを図ることが可能と考えます。
  • 現行制度の拡充が可能でない場合は、EFPIAは、少なくとも新薬創出加算の対象となる製品の範囲を減らさずに、現行制度をそのまま存続することを求めていきます。なお、EFPIAは、当制度の正式名を「新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度」から「イノベーションサポート制度」に変更すべきと考えます。

Q9. 日本の国民皆保険を維持しつつ、日本の患者さんが今後も新しい治療へ早期にアクセスし続けられるようにするために何をすべきか、EFPIAはどのように考えますか?

  • 研究開発に基盤を置く製薬企業にとって、長期間の巨額の投資を要する医薬品の研究開発のためには制度の予見可能性と安定性が極めて重要です。
  • 日本の患者さんが今後とも新しい治療に早期にアクセスできる体制を維持するためには、医薬品の研究開発の出口である薬価において、その特許期間中には公正かつ予見可能な方法でイノベーションに対する適切な評価を与える安定な枠組みを構築していただきたいと思います。また、2015-16年に見られたような予見性と安定性を低下させる突然のルール変更はこの先あってはならないとEFPIAは考えます。
  • EFPIAは、以下について、イノベーションを推進するための安定的な枠組みを構築するための政策として導入を支持します。
    • 効能追加により薬剤費が予想を超えて増加した場合の薬価を改定する仕組みの導入
    • 実勢価格と薬価との乖離率の大きい医薬品に対する薬価調査に基づく薬価の中間年の改定
    • 類似薬のない革新的な医薬品における原価計算方式に代わる新たな代替算定方式の検討
    • 新薬の薬価算定における外国平均価格調整に係る現行ルールの調整
    • 市販後に医療技術評価(HTA)を実施する費用対効果評価の導入

Q10. 費用対効果評価の試行的導入がなされ、2018年の本格導入に向けた議論が進められていますが、EFPIAはどのように考えますか?

  • EFPIAは医療技術および薬価についてその価値に基づく適正は価格が設定される必要があると考えています。他方、価値に基づく医療として欧州では様々な形でのHTAが導入されていますが、課題となる点も少なくありません。日本ではすでにある経験を十分に検討し、日本の制度にあった導入を進めるべきと考えます。そのうえでEFPIAでは現時点の導入について下記の通り考えています。
    • 評価対象となる製品は限定的であるべきである。日本はまだ十分確立されたHTAインフラを有していないため、多数の製品を評価することは難しい。予算に及ぼす影響が大きく、かつ大きな加算を受けている製品のみに焦点を絞るべきである
    • QALY あたりのコストの閾値に基づく方式は、アクセスへの大きな障害となるリスクがあり、 多基準決定分析のほうがより柔軟性が高く妥当である
    • すべての評価を市販後に実施すべきである。たとえば、市場参入から2年後などに実施する。薬価収載前の評価はドラッグ・ラグの再燃につながるリスクを伴う